公開講座 「胡麻油」の和食力⑴

太白胡麻油は日本料理の新たな切り札

調理にフライパンと上質な胡麻油を使うことで、現代の味覚に合う日本料理が無限大に広がる。

教える人・奥田透「銀座小十」主人
撮影・大山裕平

日本料理としての、新しい味わいの美しさ、奥深さを引き出すことのできる、油の選び方と生かし方を、名料理人による胡麻油遣いの妙技から学ぶ公開講座。その第1回の講師は「銀座小十」主人の奥田透さん。

奥田透さんが語る、日本料理の新たな骨格

「私は50歳になったときに、料理にフライパンを使うことを解禁しました」と銀座小十の奥田透さん。それまでは禁じ手にしていたフライパンと油脂を使うことで、現代の味覚に合う料理が無限大に広がると思ったからだという。
「しかし、ここに甘えると、上質さには程遠い料理や、日本料理から逸脱したものになってしまう恐れがあります」と奥田透さんは注意を怠らない。
「日本料理は、水の料理と言われてきました。一部に天ぷらなどはありますが、基本的には油の選び方、使い方がまだ成熟していません。身近なサラダ油を使う店も多く、それでは料理に上質感を出すことはできないのです。また、オリーブオイル、バター、生クリームでは日本料理にはなりません。日本料理としての味わいの美しさ、奥深さを引き出すことができる油はないものかと探して出会ったのがマルホン太白胡麻油でした」と奥田透さん。
太白胡麻油は、焙煎していない生の胡麻を搾ってつくられる、淡麗な旨口が特徴。油脂特有のベタつきがないので、日本料理に上質な味わいをもたらすことができるのである。

マルホン太白胡麻油の生かし方を教わった。
「上の画像は、令和6年の10月のお料理でお出しした“秋刀魚と松茸の秋巻 おから添え”です。あえて秋刀魚を松茸と合わせ、味付けに赤味噌を使い、秋刀魚の新たな魅力を引き出すことを狙いました。これを春巻の皮で巻き、太白胡麻油で揚げました」と奥田透さん。揚げることで、従来の日本料理にはなかった味わいと食感の楽しさをつくり出す。
「揚げ油の選び方が肝心です。サラダ油では平凡な料理になってしまいます」。
そして、秋刀魚同様に身近な素材である“おから”を添える。
「脇役の質が、一つの料理の完成度を高める上で重要です。おからを美味しくするためには上質な油が必須です」。
おからを太白胡麻油でよく炒めて、大豆のいい風味を引き出す。さらに、たっぷりの太白胡麻油をおからに含ませ、それから出汁と調味料で炊き上げる。太白胡麻油を湛(たた)えたおからは、旨味が豊かで満足度が高い。しかも、油が淡麗だから、料理に油を感じさせることもない。ここが肝心なのである。

マルホン太香胡麻油を使った料理もある。11月のお料理の「大根の太香焼」だ。厚切りの大根を下ゆでし、出汁などで炊いたものを太香胡麻油でこんがりと焼いて供する。
太香胡麻油とは、浅煎りした胡麻からつくられる、おだやかな胡麻の香りが特徴の胡麻油だ。
「出汁を含ませた大根に、太香胡麻油のもつ上品な風味を加えます。太香胡麻油は、加熱すると胡麻の香りを前面に感じさせることなく料理に深みを出せるため、現代の味覚に合った特別感のある日本料理になります」と奥田透さん。
添える蒸しあわびと青菜にも太香胡麻油を使っている。蒸しあわびは仕上げに太香胡麻油で焼いて香ばしさを加えてある。青菜は小松菜を使い、塩ゆでするのではなく、太香胡麻油で炒めてから出汁などを加えて炊き上げる。
「青菜を炒めることで、青菜の嫌なところが美味しさに変わり、さらに冴えた食感になります。太香胡麻油を使うことで、味に深みが出ますので、日本料理の新しい煮びたしとして魅力のあるものになるわけです」。

「秋刀魚と松茸の秋巻 おから添え」
の調理ポイント

「秋刀魚と松茸の秋巻 おから添え」は、秋の春巻料理。マルホン太白胡麻油なしには成り立たない料理だ。秋刀魚を松茸と合わせて赤味噌で味付けし、春巻きの皮で包んで太白胡麻油で揚げる。これまでの日本料理になかった食感、香ばしさ、さらには油の旨味を加えることで、新しい味わいのある料理になる。おからは、たっぷりの太白胡麻油を含ませることなどで豊かに仕上げる。

秋巻(春巻)は、サラダ油ではなく太白胡麻油で揚げることで、上質感のある揚げ物になる。太白胡麻油は、揚げた後の油切れが良いので日本料理に使いやすい。さらに、太白胡麻油は酸化しにくいという特徴もある。

おからは、まず太白胡麻油で炒める。さらに、たっぷりの太白胡麻油をおからに含ませる。淡麗旨口な太白胡麻油だからこそ、料理に油を感じさせずに、豊かな旨みをつくり出ことができる。

大根の太香焼の調理ポイント

「大根の太香焼」は、香ばしく焼いた大根から、たっぷりのお出汁が口中に広がるお料理。大根はゆでて出汁で炊き、太香胡麻油で焼いてある。大根に添えてあるのは、蒸しあわびを太香胡麻油で焼いたものと、小松菜を太香胡麻油で炒めてつくる食感が楽しい煮びたしだ。

出汁で炊いた大根を太香胡麻油で焼く。上品な風味の胡麻油で焼くことで、大根に官能に訴えるような風味を加える。

小松菜を太香胡麻油でシャキッと炒める。そこに出汁などを加えて炊くと、旨みと食感が新しい煮びたしになる。

結び。「六味」を日本料理に

「日本料理は五味を大切にしてきました。その次の味覚である六味は、“脂味”や“淡味”と言われています。これらの味覚を料理に上手に取り入れることが現代の日本料理の課題です」と奥田透さん。淡麗旨口である太白胡麻油と、加熱すると胡麻の香りを感じさせることなく料理の風味に深みを出せる太香胡麻油は、まさに脂味であり、淡味である。
「上質な胡麻油は、日本料理としての味わいを豊かに広げていく上で切り札とも言える有効な素材だと思います」と奥田透さんは結んだ。